はじめに:文系の修士論文の構成
こんにちはSayaです。
今回の記事では文系の修士論文の構成についてお話していきます。
とくに、この記事は
- University College Londonの指導教官に教わったこと
- 専攻文献を読んで勉強したこと
- 私が実際に執筆した修士論文の構成
を参考に、英国大学院での文系修士論文の構成についてお伝えしていきます。
英語で執筆する文系修士論文の構成
多くの人にとって、英語で修士論文を執筆する作業は、初めて長い文章を英語でまとめる機会となるのではないでしょうか?
私にとっても、UCLに提出した修士論文は、人生で一番長い英語の文章となりました。
とても貴重な経験でした。
UCLの場合修士論文の分量はコースによって異なります。
私が修了したMA Sociology of Education (教育社会学専攻)を例とすると
- 2教科必修科目+2教科選択科目の場合
20,000wordsの修士論文(実証研究) - 2教科必修科目+3教科選択科目の場合
10,000 wordsのレポート(理論研究可)
私は修士論文の20,000wordsの執筆を選択しました。
基本的に、ワードカウントは10%の誤差が許可されているので、許可される分量は18,000-22,000wordsとなります。
修士論文の分量や、履修科目数は大学や専攻によって大きく異なります。
今回、ご紹介する修士論文の構成は私の執筆した20,000 wordsを基準にしてご紹介します。
なお、今回の構成については、先生と私の話し合いを再現しながら、どのように修士論文の文章比率が完成したのかご説明していきます!
先生、よろしくお願いします!
はい!Sayaさんへのアドバイスが、多くの修士課程の学生さんのお役に立てばいいな〜と思っていますよ。修士論文を書き始める前に、今回の構成案を参考に、自分自身の章立てを考えて、指導教官と話をしてみてください。そうすると、指導教官からいいアドバイスがもらえるはずですよ。
Acknowledgement
修士論文には、ほぼ必ず謝辞(acknowledgement)を書きます。
日本語の論文の場合、謝辞は一番最後に含めますが。英語の論文であれば、謝辞は一番最初です。
修士論文の執筆に関係する方々、自分自身が心から感謝している方々に向けて、お礼の言葉を述べましょう
私の時は次の方々にお礼の言葉を述べました
- 指導教官
- 研究に参加してくださった先生方
- 修士論文のピアレビューをしてくれたUCLの友人
- 修士論文に意見をくださったUCLの博士課程の先輩
- ロンドン滞在期間中、ずっと生活を支えてくださったハウスオーナー
- ロンドン大学受験から修了まで応援してくれた家族
Abstract
つづいて、Abstractです。
Abstractは、だいたい修士論文の最終まとめができた段階で書くので
書くべきことは、見えているはずです!
Abstract は、500words くらいで書くといいですよ!
分かりました!Abstractで書くべきことは、修士論文全体の要約でいいですよね?
そうですね。Abstractは結構難しいものなんです。あの長い修士論文をまとめるのだから、書きたいことを絞って書かなきゃいけないからね。そのためには、What / How / を基準にして書くといいわよ。1〜2センテンスが修士論文の1セクションだとイメージしながら書くと、まとまりやすいかもしれないわね。
Introduction
修士論文の書き始めは、Introductionからスタートしていきます。
とくに、「Background(背景情報)」から書き始めることがおすすめです。
Sayaさん、まずは、今回の修士論文の研究計画書をもとに、Introductionの一部となるBackgroundを書いて、次の面談の時に持っておいで。Introductionには、修士論文全体の流れだけでなく、Background(背景)・Definition (定義)なども含めていいのよ。
分かりました先生!Introductionは何ワードくらいになりますか?
そうね、2000wordsくらいかしら。きっと、コースワークの課題をしながら修士論文も取り組まないといけないだろうから、1ヶ月後までに提出できますか?
はい!
Literature Review
Literature Reviewはだいたい3〜4セクションくらいを作りましょう。Literature reviewには、Theoretical Framework(理論概念)を含めてくださいね。おおよそ、6000words書くとちょうどいいと思うわ。まずは、1セクション書いてきてください。それをもとに、次回の面談の時に話し合いましょう。
先生、初歩的な質問で大変申し訳ないのですが・・・
Theoretical Frameworkのない研究というものはあるものなのでしょうか?
そして、私の研究において、ぴったり合うTheoryが分からないのですが・・・。
ま〜、確かにきっちりとしたTheoryを使わないで論文を書き上げることもできるわ。ただし、Theoryが含まれていると、その論文で得た結果の理論的な後ろ立てをつけられるので、その論文の信頼性や妥当性が高まるのよ。「インタビューしました、分析しました、結果はこれです」だけだったら、十分な研究とは言えないのよ。そして、Sayaさんの研究であれば、確かに特定の誰かが提案したTheoryを使うといった感じではないけど、一部、Theoryが使えそうなポイントがあるわ。例えば、Teachers’ beliefs について研究するのであれば、どのようなプロセスでTeachers’ beliefsは構成されると考えられているのか?beliefsとknoweldgeの違いは何か?少し調べてみてごらんなさい。
ありがとうございます!先生!
Methodology
Methodologyはおおよそ2000wordsを目処に書きましょう。ここでは、研究方法、研究者情報、サンプリング方法、分析手法を含めましょう。Ethic(研究倫理)も入れてくださいね。
はい、分かりました。研究手法の妥当性や、インタビューをした先生方の選択の妥当性について先行研究を引用しながら、述べたいと思います。
Discussion
Discussionでは、結果の分析をするのですが、Literature Reviewと関連づいていることが大切だわ。Theoretical Frameworkをしっかりと考慮して、考察してごらんなさい。Discussionは修士論文で一番大切な部分なの。10,000words分を書いてみなさい。
はい!先生、私の研究は研究対象の先生方のナラティブに着目して、ライフヒストリー法を用いた研究なので、Discussionでは、一人一人のこれまでのストーリーを個別に記述した後、Research Questionに対応した分析と議論を述べたいと考えています。なので、個別のストーリーと、それぞれの分析を4000words、 議論ポイント3つ(それぞれ2000words)、合計10,000 wordsで調整して書いてみます。
いいわね。それでは、まず個別のストーリーを書いてきてごらんなさい。とりあえず、1回目の執筆はドラフトなので、今後、話し合いながら、2回目、3回目と書き直しながら、深みのあるDiscussionを書いていきましょう。
Conclusion
Sayaさん、最後の章だわ!ここまで、お疲れ様。あと一息頑張って。最後の章は、2000wordsでまとめるといいわよ。今回の研究で残された課題と、今後の展望なども含めてね。
はい先生!ラストスパート頑張ります。
References
Referenceには色々なスタイルがあるので、ご自身の大学やコースの指示を守りましょう。文献の管理については、以前、詳しい記事を執筆しておりましたので、そちらを参考になさってください。
Appendix
修士論文の最後には、Appendixをつけます。
Appendixは基本的にワードカウントには含まれません。
私は次のようなものを添付しました。
- Information Sheet
(修士研究の情報に関する書類 。英国の大学であれば、一般的に研究を始める前、この書類の作成が義務である。この書類が認められてから、修士論文の調査をスタートすることができる)
- Consent Form (研究参加者の同意書)
- 英語の質問紙
- 日本語の質問紙
その他、それぞれの研究で使用したものなどを添付しましょう。
まとめ:文系の英語修士論文の構成は?
それでは最後に、英語修士論文の構成をまとめます。
このような割合で、章立てと文章量を考えてみるといいかもしれません!
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